| FET差動プリアンプ |
定電流素子として2SK30A GRランクを使う。特性の揃った2個が必要なので町田のサトー電気で10個購入した。
10個買っても300円弱で真空管と比べれば破格の安さである。グラフはDC5Vを印可したときのIdssの
バラつき具合を示す。このうち4.08mAと4.1mAの2個を使用することにしました。マウスを画像に重ねると
画像が拡大
されます。(以下同様)
2SK170は合計で4個必要なのでサトー電気で20個購入した。20個で900円弱であった。BLランクなので
Idssは6mAから12mAの間に分布している。測定結果からなるべくゲインを揃えるため7.5mA近辺の4個を使用する
こととした。ぺるけさんによるとIdssを揃えるだけでは十分でなく「冶具」によるバイアス電圧測定が推奨
されている。小生は少し異なる方法を考えて見ました。すなわち、最終的な決定は実際の増幅回路でドレイン
間の電位差を測定し、最も電位差が小さい組合せを選別することとし、7.45mAを右チャンネルに、7.63mAを
左チャンネルに使用しました。
FET差動プリアンプのハラワタです。真空管差動プリアンプのパーツをほとんどそのまま使用していますが、
異なるところはハム低減を狙いACラインに2芯シールド線を使用、見様見真似のヒータートランスへの静電
シールド用銅板の巻付け、左右チャンネル間と電源部とのクロストーク低減を狙ったシャーシ内での銅板
シールド増設などです。
別の角度から撮影したFET差動プリアンプのハラワタです。
FET差動プリアンプの回路図です。ぺるけさんの回路のオマージュですが、手持ちのパーツの有効利用の
ため少し異なった数値になっています。12Vのヒータートランスを倍電圧整流して35Vを得て3端子レギュレータ
により安定な24Vを得ています。ぺるけさんのアイデアを利用させてもらい、抵抗とLEDによってこれを+20Vと
-4Vに振り分けています。B電源用トランスは110Vと220V巻線を直列に繋いでチョークコイルとして再用して
いますが効果のほどは不明です。RU4Yは手持中古品の100V 2Aのファーストリカバリダイオードです。
ぺるけさんはFETの選別方法として冶具によるバイアス電圧の測定を推奨していますが、ここは少し違う方法で
選別して見ました。すなわち、実際の回路で片方のFETを実装した後もう一方のFETを3本の蓑虫クリップで接続
してドレイン間の電位差が最小の組合せを見つけるという方法です。
グラフは右チャンネルのIdss偏差とドレイン電位差の相関性を示し、Idss偏差とドレイン電位差は
ほぼ正比例しています。基準Idssは7.45mAです。ドレイン電位差が何V以下でなければ差動アンプとして動作
しないのか小生は知りませんが、0.5V (ドレイン電圧の5%に相当)以下に納めるにはIdssの偏差は0.25mA以内
にする必要があります。測定の結果、ドレイン電位差が45mVであったIdss 7.81mAのFETを選定しました。
左チャンネルの電位差測定結果です。基準Idssは7.63mAですがドレイン電位差を0.5V (ドレイン電圧の5%)
以下に納めるにはIdssの偏差は0.25mA以内にした方が良いようです。測定の結果、ドレイン電位差が
265mVであったIdss 7.66mAのFETを選定しました。
FET差動プリアンプの振幅周波数特性です。低域は大変優秀ですが半導体アンプにしては高域の減衰が
早いなという感じです。2SK170のデータシートによると入力容量が30pF、帰還容量が6pFもあり、2SK30Aの
8.2pF、2.6pF、6DJ8の3.3/6pF、1.4pFに比べると4〜5倍も大きく高域特性はあまり期待できません。
でも「静かなプリアンプ」としてはこの程度の高域特性で合格です。バスブーストも良く効いています。
FET差動プリアンプの入出力特性です。常用する出力電圧帯(0.1〜1V)では十分リニアだと
思います。ゲインは2.7倍しかありませんがパワーアンプのゲインが大きいのでこの程度あれば十分です。
ぺるけさんの計算方法によると、理論上のゲインは2SK170のgmが22mSと仮定すると、裸ゲインは
(22 x 4.7)÷2 = 51.7、負帰還定数は (100 + 51)÷51 = 2.96、よって負帰還後のゲインは (51.7 x 2.96)
÷(51.7 + 2.96) = 2.8 となり実測値にかなり近い値です。
FET差動プリアンプの歪率特性です。発振器がCD再生式のため2V以上の出力のデータがありません。
また、小生の歪率計の残留歪率は0.02%程度ですから発振器の歪率を測定しているようなもので、
実際の実力はもっと良いのかも知れません。
一応常用電圧帯(0.1〜1V)では全ての周波数でほぼ0.1%以下なので問題ありません。残留雑音は小生の
自作ミリボルト計は3mVレンジまでしかなく、正確な測定は出来ませんが無理やり読めば0.01〜0.02mV
くらいです。
FET差動プリアンプの出力1V時のクロストーク特性です。WaveSpectraで測定したため20Hzから20kHzまでしかデータ
がありません。50Hzや100Hzは電源ハムの影響があるため測定を避けています。6DJ8差動プリアンプに比べて約10dB
ほど改善されています。電源に大容量電解コンデンサを使用したためか、それともシャーシ内にシールド
板を増設した賜物でしょうか。
FET差動プリアンプの2Vp-p時の方形波応答波形です。上から20Hz、100Hz、1kHz、10kHz、
50kHz、100kHzですが低域の優秀な特性に比べ高域はもう一つというところです。
真空管プリからFETプリに改造しての感想:
1.ノイズ、とりわけハムノイズが減りました。
2.歪みが減ったためか音が静かになりました。
3.チャンネル間のクロストークが減ったためか音の奥行き感が増しました。
4.ケースを叩いても何のノイズも聞こえません。
5.何時間使ってもケースは暖かくなりません。
「付録1」 アースループによるハム発生について:
真空管差動プリアンプ使用時には「真空管アンプでは僅かなハム音は聞こえて当たり前、スピーカー
から1〜2m離れれば聞こえなくなるから問題なし」と思っていました。しかし、FET差動プリアンプに
してからはスピーカーに耳をつけて聞こえるハム音が気になり始めました。
小生のシステムの場合、811AメインアンプではFET差動プリの電源を切っていてもアンプ切替SWを
811Aアンプに繋ぐだけでハム音が1mVから3mVに増加しました。片方のチャンネルだけ接続の場合は
ハム音は増加しません。
また、811Aアンプ入力の左右チャンネルをショートするだけでハムが増えることも判明しました。
811Aアンプの電源トランスの50Hzがアースループを横切っているようです。
よく見ると入力ピンジャックが絶縁タイプでなくアース側がシャーシに落ちており、シールド線で
ボリュームのコールド側で再びアースに繋がっているため、シールド線とシャーシ間でアースループ
が出来ていました。早速絶縁タイプのピンジャックに取替えたところハム音は激減しました。今まで
安いということだけで絶縁タイプでないRCAピンジャックを使っていましたがこれからは注意したい
と思います。
「付録2」 FETを2SK117に替えて遊んでみました:
高域特性があまり良くないのが気になっていたのでFETを2SK117に替えて方形波特性等を測定しました。
2SK170の入力容量が30pF、帰還容量が6pFであるのに対し、2SK117は各々13pF、3pFと約半分なので
高域特性が改善されるのではないかと考えました。
10個購入した2SK117BLから9Vを印可した状態でIdssを測定し、10.88mA/10.92mAと11.04mA/11.17mAの
2組のペアを作りました。プリアンプのゲインはgmの低下に伴って少しだけ下がりましたが
高域特性に改善が見られました。FET交換の結果、高域がより鮮明になったような気がしますが
精神安定剤みたいなものでしょう。
2SK117差動プリアンプの振幅周波数特性です。2SK170に比べて高域で特性が改善されていることが判ります。
やはり入力容量、帰還容量が半分になった効果でしょうか。
2SK117差動プリアンプの2Vp-p時の方形波応答波形です。上から10kHz、50kHz、100kHzですが2SK170に
比べると立ち上がり特性が改善されています。
「付録3」 バイパス回路を設置して遊んでみました:
前面に開けた穴が1箇所不要になり点灯しないLEDランプで隠していましたが、プリアンプを通さないバイパス
回路を設置しました。つまり、パッシブアッテネーター化する切替スイッチです。2回路3接点の小さな
スイッチで23接点抵抗アッテネーター出力とFETプリアンプ出力を切り替えます。全体のゲインは落ちますが
信号対雑音比、歪率、直線性とも素晴らしいこと請け合いです。電源も不要ですので省エネの原点に立ち帰れます。
小生の駄耳で聴いた感じでは、出力レベルが若干違うだけで両者とも甲乙付けがたいですがプリアンプを通すと
ボーカルが艶っぽくなるような気がします。
「付録4」 バスブースト回路を変更して遊んでみました:
本機のバスブースト回路は「ぺるけ」さんのホームページのオマージュですが、小口径スピーカーではブースト
効果が小さいので勝手に改造して見ました。ピュアオーディオから益々遠ざかってしまいますが確実に低音は
豊かになります。
変更したバスブースト回路です。コンデンサの容量を小さくしてブースト開始周波数を高くしたのと、
ブースト量を決める抵抗を2本から1本にしてBB1とBB2における超低周波(10Hz以下)のブースト量を同じに
しました。
負荷抵抗51kオームで測定した回路変更後のバスブースト特性です。
BB1とBB2ではブースト開始周波数が変わるだけで超低周波のブースト
量は同じです。オリジナル回路ではBB1の位置では低音増強効果がよくわからなかったですが、改造後は
明らかに低音が増強されており、BB2では盛大に低音が出て来ます。強度のバスブーストはピュアオーディオ
の世界では邪道かも知れませんが、小さなブックシェルフ型スピーカーでは許されるのではないでしょうか。
「付録5」 遅延回路を追加して遊んでみました:
本機はパワーアンプのボリュームを最大にした状態で使用するので電源投入の順序によっては「ボコン!」
というポップ音が発生することがあります。そこで、プリアンプの出力側に遅延リレーを追加しました。
現在の最終回路です。2〜3秒の遅延時間があるためポップ音が出ることはありません。ついでに電源
回路を正電圧(+20V)部分と負電圧(-5V)部分に分割しましたが効果の程度は不明です。