| 40KG6AハイブリッドSEPP DC OTLアンプ |
2組の40KG6Aペアチューブがわずか1万円で買えるネットオークションを見つけ即落札しました。
箱にはPhilips ECGのメーカー名が書かれていますが管面に刻印がありません。
6mmのプレートキャップも1個200円という安さで買えました。まさにネットオークション様々です。
本アンプ原作者はソケットとプレートキャップを使用せずピンに直接半田付けしていますが、小生は
とてもそんな芸当は出来ません。真空管は寿命や特性にバラツキがあり差し替えするものだと信じて
いますので。
マウスを画像に重ねると
画像が拡大
されます。(以下同様)
MJ誌で紹介された回路はOTLのみでなくPTL(Power Transformer Less)にもなっており、一層のコストダウンが
図られています。しかし、PTLは感電の危険性は勿論のこと、本アンプに接続するCDプレーヤー、チューナー、
プリアンプ等に悪影響を与える心配もあることから、若干コストは嵩みますがノグチの1:1の絶縁トランスを
使いました。40KG6Aのヒーターも絶縁トランス経由にするため容量が200Wになりとても大きいですが、一般的な
電源トランスに比べると1万円以下で買えてコストパフォーマンスは良いです。
貧乏性の小生は安いアルミ板と木材を加工してシャーシーを作ることが多かったのですが、余命のことを
考えてそろそろ真空管アンプは最後にしようかと思い、1万円ちょっとのタカチ製メタルケース
(W:370, D:255, H:58mm)を奮発しました。アルミ製天板の厚さが2mmあり、電動ドリル、リーマー、ヤスリ
しか持っていない小生には手に豆を作りながらの辛い穴あけ作業になりました。
真空管OTLアンプの特徴は低電圧・大電流であり、整流後のリップル対策は大容量の電解コンデンサーに
なります。写真は勢ぞろいした電解コンデンサー群です。
OTL DCアンプはDC出力電圧が直接スピーカーに流れるのでスピーカー保護回路は必須です。
写真は小さなプリント基板を使って制作した保護回路です。
スピーカー保護回路の回路図です。MJ誌の製作
例ではMOS-FETとデジタルOPアンプによる電子的保護回路が使われていましたが、アナログ派の小生は
苦手なのでリレーによる古典的保護回路を自作しました。普通、「555」というタイマーICが使われますが
私は面倒なのでCRの時定数を利用した簡単なタイマーを作ります。電源投入後真空管が安定する約40秒後
にアンプ出力がスピーカーに接続されます。遅延時間の計算値は43秒なのでほぼ理論通りの動作です。
この状態で出力端子のオフセット電圧が約±0.6Vを超えるとスピーカーが切り離されます。
オフセット電圧が±0.6V以下になると約40秒後にスピーカーは再び接続されます。
真空管OTLアンプは大容量の電解コンデンサーを必要とします。電源を入れると2組の9,000μFが充電を
開始しラッシュカレントにより電源ヒューズが飛びます。写真は小さなプリント基板を使って制作した
ラッシュカレント緩和回路でヒューズが飛ぶのを防いでいます。
ラッシュカレント緩和回路の回路図です。電源投入後およそ4秒後に
51オーム 10Wの抵抗をショートするリレー回路を作りました。いつもの電解コンデンサの充電時間を
利用した簡単な遅延回路です。遅延時間の計算値は4.3秒なのでほぼ計算通りの動作です。
半導体素子で構成されるドライバー段の基板です。出力オフセット電圧とアイドリング電流の調整が
シャーシー上の穴を通して出来るように2個の半固定ボリュームを基板裏側に取り付けました。温度
上昇が激しい高耐圧トランジスタは全て小型のヒートシンクを付けました(それでも熱くなるので
後で鉄板を追加しました)。素子の配置がいい加減な
ため立体交差配線が見られますがまあ良しとしましょう。
実を言うとこの基板作成に大変な労力を要しました。これら2枚の基板とも2代目です。
アンプの試験中に多くの素子を破壊したため作り直したものです。
何しろ半導体回路に+130V、-260V、-14Vが給電されている訳ですから、ショートした時の破壊は致命的
です。70才に近い老人にとって半導体素子の基板作成は限界に近くもう最後にしたいものです。
正直言って2枚の基板が壊れて作り直しが必要になった時、もうOTLアンプを作るのは諦めようかと
思いました。でも他の部品が可愛そうなので2週間ほど冷却期間を置いて製作を再開しました。
何事も諦めてはいけんのじゃ!
アンプ正面です。主電源投入確認用の緑色LEDランプ、スピーカー保護回路動作確認用の赤色LED
ランプ、プレート電流測定用ラジケーターを装着しています。ラジケーターは電流計に直列抵抗を
入れ、プレート回路に挿入した1オームの電圧降下を測定しフルスケール400mAの電流計として使用
しています。1オームは上側球に挿入していますが、出力オフセット電圧が0Vであれば下側球には
同じプレート電流が流れていることになります。
アンプ背面です。出力オフセット電圧のチェック端子を装備しています。大容量電解コンデンサーの
ケースはアース側端子に接続されており、マイナスアースの場合は問題ないですがプラスアースの
場合はケースにマイナスの高電圧が掛かるので感電やショートに要注意です。このため、ケース上面を
接着剤付きのビニールクロスを丸く切って貼り付けました。
恒例のはらわたです。こんな複雑な真空管アンプは初めてです。シャーシー内はほとんど満杯の状態で
半導体素子が夏場の高温に耐えられるか心配です。40KG6Aはカソードを除き電極が2本の足から出ている
ので、ソケットの接触不良事故を少しでも減らすためリード線でパラ接続しています。DCアンプでは
接触不良によるアンバランスは大事故に繋がりますので。なお、高圧トランジスタがとても熱くなるので
小さな放熱板に厚さ2mmの鉄板を抱かせました。
アンプ部の回路図です。抵抗は手持ちのものを使ったので原回路と異なったところがあります。
高域発振防止の10オームと0.1μの直列回路は何故か入れるとアンプが200kHz近辺で発振するので440オーム
4Wの抵抗に変更しました。同じく10kHz方形波応答に現れる小さなオーバーシュート対策として負帰還抵抗3.3k
オームに並列に20pFを入れたところオフセット電圧が不安定になりました。これらの不調の原因は不明なので
位相補償コンデンサの使用は初段の20pFのみとしました。
アイドリング電流を175mAとし真空管を軽く(最大プレート損失の60%)使っているので最大出力は8Wくらい
です。MJ誌の原作では270mAも流して20Wを得ていますがそんな恐ろしいことはとても真似出来ないし出力
についても20Wも要りません。
オフセット電圧、アイドリング電流の調整方法:まず始めに500オームのボリュームを左一杯に、50オーム
のボリュームを真中辺りに設定しておきます。これで40KG6Aのアイドリング電流は最小になります。500オーム
ボリュームと直列に接続されている3kオームの抵抗値によって変わりますがプレート電流はほとんど流れない
はずです。この状態で50オームのボリュームをゆっくり回して出力オフセット電圧が0Vになるよう調整します。
次に500オームのボリュームを右方向にゆっくり回すとプレート電流が増えていきます。オフセット電圧が
変わりますので50オームのボリュームで0Vにします。これらの動作を繰り返して所定のプレート電流に設定
出来たらオフセット電圧を最小(±10mV以下ならOK)にします。
電源部の回路図です。電源OFF時の残留電荷をゆっくり放電させる抵抗を装備しています。±14V電源のため手持ちの
12Vヒータートランスを流用しました。実際は負荷が軽いためかAC12V端子を使うと出力がDC17Vとなってオフセット電圧
調整が不安定だったのでAC10V端子を使用しました。絶縁トランスの内部抵抗のためか、PTLの場合に比べると
全体的にDC電圧が5〜10V低めに出ています。
40KG6Aのヒーター回路です。ここで注意が必要なのはヒーター:カソード間耐圧の問題です。
この球の耐圧は±250Vであり最も大きな部類であると言えますが、ヒーター配線には相当の配慮が必要です。
SEPP回路の下側球のカソードには常時-130Vが印加されています。そこで下側球のヒーターのコールド側を
アースに落とすとホット側の電位は±56V(AC40Vの1.41倍)になり、カソードとの電位差は-74V〜
-186Vとなり、耐圧±250V以内に納まっています。一方、上側球のカソードの電位は0V近辺であり、ヒーター
のホット側の電位は±113V(AC80Vの1.41倍)なので、カソードとの電位差は+113V〜-113Vとなり
耐圧±250V以内に納まっています。つまり、ヒーターをアースに落とす場所を間違えるとマズイことに
なります。決してAC20V電圧を負担する4 x 8.2オームの抵抗側でアースしてはいけません。
真空管OTLアンプはかなりの発熱があり特に夏場は大変です。その発熱量を簡易に計算すると、ヒーター
で100Vx0.3Ax2=60W、プレート損失で260Vx0.175Ax2=91W、半導体素子の発熱を無視しても、合計で
151Wも発熱します。まるで小さな電気ストーブ並みです。そこでパソコン用8cm角冷却ファンを用いた
簡易冷却システムを作成しました。騒音低減のため12Vのファンを9Vで動作させ単にシャーシー上に置いて
いるだけです。冬場など不要なときはプラグを抜いて取り外すことが出来ます。効果の程度は夏場になって
みないと判りません。オフセット電圧も安定しており±10mV以内に納まっています。プレート電流も
ゆっくり増えて行き5分くらいで安定します。
当初、40KG6Aのヒーター減圧用抵抗(8.2オーム 10W 4個)をシャーシ内に収納しましたが、
12Wのヒーターが内部にあるのと同じでシャーシー内がとても熱くなったため、抵抗に放熱板を付けた
上で外付けとしました。左右に同じように配置しました。これでシャーシー内の温度上昇がかなり
改善されました。
今回誤ってトランジスタを何個か破壊してしまいましたが、テスターで生死の確認は出来るものの
果たして本当に使えるかどうか不安になります。そこで、簡単な直流電流増幅率(hfe)を測定する回路を
紹介します。大型トランジスタでは正しいhfeの測定は難しいですが大体の値が判れば良しとします。
原理は、ベースに0.01mAを流した状態でコレクタ電流を測り、それをベース電流で割り算したものが
hfeになります。例えば1mAの場合、hfeは100ということになります。PNPタイプでは電池の極性を反転
するだけでOKです(mA計の振れは逆になりますが)。
出力1W時の振幅周波数特性です。OTLなのでもう少し滑らかな高域特性を予想していましたが意外でした。
半導体ドライバー部の特性が出たものと思われます。多分、第一ポールとか第二ポールとかが関係
していると思いますが不勉強で小生には解りません。
周波数1kHzで測定した入出力特性です。8Wくらいから特性カーブが曲がり始めます。10Wを越すとプレート
電流が400mAを超えてメーターが振り切れるので測定は手短かに行なう必要があります。アンプゲインは14倍、
残留雑音は0.25mV、ダンピングファクターは6.8であり真空管アンプとしては十分な値です。
歪率特性です。出力を増やすとプレート電流が増加してIpメーターが振り切れて最大プレート損失を超え、
長時間の歪率測定は出来ないため8Wまでしかデータは取っていません。過去に見たことのない珍しいカーブ
ですが、出力が4Wあたりから歪率の増加が一旦収まるのはOTLアンプの特徴なのか或いは5極出力管の特徴
なのでしょうか。いずれにしても出力8W以下ではどの周波数も0.5%以内に収まっており満足できる値です。
出力1W時のLchからRchのセパレーション特性です。ハイブリッドOTL DCアンプのセパレーション特性の
データがなく興味があったので測定しました。歪率特性と同じパソコンソフトのWaveSpectraで
測定しました。結果は、左右チャンネル間のデカップリング処理をしていないにも関わらず良い特性で、
特に低域でのセパレーションの劣化がありません。ドライバー段とファイナル段の電源が全く独立して
いるのが影響しているのかも知れません。-120dBはノイズレベル以下の数値でWaveSpectraで波形を確認
できません。
40KG6A SEPP OTL DCアンプの2Vp-p時の方形波応答波形です。上から10Hz、100Hz、1kHz、10kHz、100kHz
です。さすがDCアンプだけあって10Hzでも僅かなサグが見られるだけで低域は直流までフラットな
周波数特性であると推定されます。高域も10kHzに小さなオーバーシュートがあるが大きな問題なし。
100kHzでは立ち上がりが少し悪くなり何やら怪しい折り返しも見えますが真空管アンプでは優秀な
方でしょう。
◎真空管ハイブリッドSEPP OTL DCアンプの印象
OTL DCアンプの音は初めてですが低音から高音まで良く出ていると思います。特にドラムスの
アタック音は素晴らしいです。スピーカー保護回路は正常に動作していますが、ハラハラしながら
緊張感をもって聞いているのが影響しているのかも知れません。真空管を軽く使っているので最大
出力は8Wくらいですが小生のオーディオ環境では十分な値です。ハム音も全く聞こえません。
コスト面では、絶縁トランス、入力ボリューム、真空管ソケット、プレートキャップ、プレート電流
監視用ラジケーター等使用のため3万円台は無理で5万円になりましたが、それでもOPT式の真空管
アンプと比べれば半分くらいだと思います。重量も絶縁トランスだけなので軽く正に年寄り
向きです。
このアンプを使い始めて数年になりますが動作は全く安定しています。終段管のプレート電流は175mA
で変わらず、電源投入後にアンプをスピーカーに接続する遅延リレーもきっちり30秒で動作します。
◎追記:アンプ出力部にDCカット用コンデンサを取り付け
アンプ出力のDC電圧は±数mVで安定していますが、虎の子のJBL大型スピーカーに直接接続するのは怖いので、
50V 4700μFの電解コンデンサと50V 0.47μFのフィルムコンデンサを挿入しました。小生の陀耳で聴いた感じ
ではコンデンサ挿入による音質劣化は認められませんでした。これで万一の場合のスピーカー破損事故は
防げると思われ安心して聞いておれます。