| 211シングルアンプ |
中国製のUV211です。メーカーは不明ですが長さが20cmもありとても大きく重いです。ネットオーク
ションでゲットしました。古いUSA製だと1本で5万円くらいします。USA製の方が良い音を出すとは
思いますが、小生の駄耳ではどの程度違いがあるか分からないので安い中国製で我慢します。セラ
ミック製のソケットも特殊で同じくネットオークションでゲットしました。
マウスを画像に重ねると
画像が拡大
されます。(以下同様)
中国製整流管5AR4(新規購入品)とRCA製12AU7A(クリアトップ管として有名)、Philips ECG製
5687です。
直熱真空管211はヒーターが十分温まってからプレート電圧を加えるのが常道なので傍熱管5AR4で遅延
整流回路を形成しています。電源オンと共にダイオード整流により460Vが生じ、その後5AR4が温まる
と徐々に910Vに上昇します。なお、5AR4は現在最も効率の高い整流管と言われています。
UV211の最適負荷抵抗は10kΩと言われていますが今回はプレート電圧が850V程度と低く電流も少し
大きめに流す予定なので5kΩとします。タンゴとかタムラ等の由緒正しいシングル用出力トランスは
50W規格だと1個で7〜8万円もします。貧乏人の小生はとても手が出せないので、菅野電機(SEL)
製の安い出力トランスで我慢する事にしました。50W規格で1次インピーダンスは5kΩ、2次インピー
ダンスは32、16、12、10、8、6、4Ωです。性能は余り期待出来ませんが何しろ2個で3万円以内
と言うのが魅力的です。
211のヒーターは10V/3.25Aでこれの2巻線を備えた電源トランスは出力トランスと同じくらい高価です。
そこでヒータートランスを購入する事にしました。6〜12V/5Aの2巻線を備えた物が5,000円ちょっとで
購入出来ました。これで今まで811Aや300Bシングルアンプに使っていた電源トランスがそのまま使
えます。5Aの容量があるので1次を110V端子、2次を10V端子にしたところ丁度良い具合になりました。
トランス結合の音は811Aや300Bで充分堪能したので当初は6CW5の3結カソードチョークドライブで
試作しました。カソードチョークに使えそうなチョークコイルをいろいろ捜した結果、SEL製の
C3035という安価なチョークコイルが見つかりました。インダクタンスは30H、電流容量は35mAで
あまり大きくなくコストパフォーマンスは最高です。何と2個で3,000円程度です。菅野電機さん、
いつもお世話になり有難う御座います。ところがアンプが完成して出て来た音がトランス結合と
似ていて少し粗削りな音だったので最終的に普通のCR結合に変えました。そのためこのチョーク
コイルは初段とドライブ段のB電源のリップル低減のための平滑回路に活用する事になりました。
安く作るための小生の得意技です。40cmx30cmx厚さ2mmと30cmx20cmx厚さ2mmのアルミ板を買ってきて
一部切り取って50cmx30cmのアルミシャーシを手作りしました。その後幅60mm、厚さ10mmの木板を
切断して接着剤で固定しました。木枠を含めると52cmx32cmになり、このサイズがステレオラックに
収容可能な限界の大きさなのと1,000Vに近い高圧を掛けるのでシャーシ内は広々とした方が良いと
考えました。なお、この時点では木枠は塗装されていませんが最終的にニスで塗装したので多少の
艶は出たと思います。
回路図はネットでいろいろ調べてから決めました。トランス結合は811Aや300Bで充分堪能した
ので当初はカソードフォロアドライブにしましたがトランス結合の音と余り変わらない事が
判明したので単なるCR結合に変えました。初段の12AU7Aは直線性に優れたSRPP、ドライブ段
の5687は211を強力にドライブするためパラレル接続とし、2本の真空管は直結して音質に影響
を与える段間コンデンサを1つ減らしました。直結にすると真空管の特性変化や抵抗の誤差等
に伴いプレート電流の安定性に問題が生じるのでドライブ段のカソードにLM317による10mA
定電流回路を挿入しました。元来211は1,000Vで55mAくらい流すのが普通ですが、今回は830V
で60mA流し負荷抵抗5kΩで使う事にしました。なお、チャンネル間クロストーク改善のため
終段にもデカップリング回路を設けました。211は直熱3極管ですが送信管のため内部抵抗が
大きくダンピングファクターが小さいので、5dB程度のオーバーオール負帰還が掛けられる
様にNFBスイッチを設置しました。小生の駄耳ではNFB無しの方が好みの音です。残留ハム
はNFBオフでも1mVでありヒーター電圧10Vのアンプでは優秀な値です。
いきなり完成したアンプをアップします。厚さ2mmのアルミ板の穴あけは相当手こずりました。
電動ドリルだけの粗末な工具しかないためヤスリやリーマーの出番が多く手に豆が出来ました。
そんな訳でアンプ完成まで1ヶ月近く掛かり途中で写真など撮る気になりませんでした。
見ての通り全く対称性がありません。パーツの位置も方向も一貫性がありません。実は電源トラ
ンスからの電磁誘導ハムが出力トランスに入るため、最終的にこのような不自然な配置になり
ました。出力トランスを出来るだけ電源トランスから離し、誘導ハムが最小になる様にしま
した。出力トランスを45度傾けると誘導ハムは極小になりますがさすがにそれは止めました。
シャーシの木枠はケヤキ色のオイルステインを塗った後、透明ニスと1000番のサンドペーパー
で3回ほど磨いたらそこそこ艶が出る様になりました。
アンプの背面です。20kgくらいあるでしょうか、とても重いです。
持ち運ぶ時はぎっくり腰に気を付けないといけません。
真空管上部の空間が狭く冷却に問題があるのでステレオラックの背部から扇風機で風を送って
います。AC100Vの小型扇風機の電源はアンプ背部のアウトレットからアンプの電源スイッチに
連動させています。また、本機は名実共にメインアンプになるので他のアンプやチューナー
などの電源に分配するためのACアウトレット端子4個を設備しています。
シャーシ内部には1,000V近い高圧が掛かっているので安全対策として2枚のMDFボードによる
底板を設置しました。底板は100円ショップで買った厚さ3mmのA4サイズのクリップボード
の金属部分を取り外した後に放熱対策として30mm径の穴を開けたものです。底板の固定は
接着した木片にM4サイズの埋め込みナットをねじ込みました。
恒例のはらわた写真です。例によって配線は余り奇麗ではありません。最大電圧は約900Vですが
特別な高圧電線は使わずなるべく電線が空中に浮くように配線しただけです。なので調整時は
ゴム手袋が離せません。
本アンプはステレオラックの最下段に設置しますが高さが十分でないので通常は扇風機で背後
から送風しています。ヒーターが煌々と点灯している様は眺めていて楽しいですが夏場は暑いです。
211をEp=830V、Ip=65mA、Eg=-41V、負荷抵抗5kΩで動作させた時の最大出力を計算して見ました。
プレート特性をインターネットから借用して負荷抵抗5kΩのロードラインを引きました。
グリッド電圧が負領域のA1級動作では計算上の最大出力は9.0Wとなりました。また、グリッド電流
が流れる正領域まで振るA2動作では最大出力は14.5Wとなり下記の入出力特性の測定結果とかなり
一致しています。負荷抵抗を大きくすればロードラインが寝てくるので使えるプレート電圧が広く
なり最大出力は増えますが小出力のA1級動作ではむしろ出力は低下します。普段小さな音量で
音楽を楽しむ小生の場合は5kΩの負荷抵抗で全く問題はありません。
周波数1kHzにおけるLチャンネルの入出力特性です。NFBオフでの電圧ゲインは約40倍で、出力8W
くらいまでまあまあリニアですが9Wを超える辺りから波形がつぶれて来ます。歪を無視すれば最大
出力は13Wまで出ます。アンプゲインを概略計算すると、初段の12AU7Aで12倍、5687のパラレル
アンプで12倍、211で7倍、出力トランスで1/25倍、トータルで約40倍となります。8畳の狭い
オーディオルームでは2〜3W程度のパワーで充分なので普段はA1級動作での使用となります。5dBの
オーバーオール負帰還を掛けると電圧ゲインは約23倍になりますが最大出力は同じです。ダン
ピングファクターは無帰還で1.2、負帰還を掛けても2.5しかなくとても小さいです。211の内部抵抗
が大きいので仕方ありません。負帰還量をもっと増やせばダンピングファクターは大きくなると
思いますが、小生は大量負帰還の音は余り好きではないのでこのままとします。
小生は周波数特性の測定が面倒臭いので矩形波応答がメインの測定項目です。応答波形を見れば大体
どの様な周波数特性であるかが推定出来ます。さすがに無帰還の100Hzではシングルアンプの悲しさ
でサグが発生していますがある程度音量を上げれば低音不足の感じはありません。無帰還の1kHzは
まあまあ普通の波形です。粗悪な出力トランスだと1kHzではっきりわかるリンギングが現れますが
このアンプは問題ありません。無帰還の10kHzでは波形の立ち上がりがやや鈍くリンギングも
見られます。安価な出力トランスなのでこの程度のリンギングは致し方ないと思います。念のため
2次側の配線を替えて疑似的な負荷抵抗を今の5kΩから6.7kΩ、10kΩに変更して最大出力とリン
ギングがどう変わるかテストしましたが、最大出力が幾らか増大する代わりに波形の立ち上がりが
悪くなると共にリンギングも大きくなったので5kΩが最善と判断しました。
念のために5dBの負帰還を掛けた状態で100Hz、1kHz、10kHzの応答波形を観測しました。100Hzと
1kHzのサグが若干小さくなり、10kHzのリンギングが少し大きくなりました。このことから負帰還
を掛けると周波数特性が低域まで伸びると同時に高域での凹凸が少し大きくなったのではないかと
推測されます。負帰還の有無による音質の変化ですが小生は負帰還無しの音が好みです。音が前に
出てくる感じが好きです。負帰還を掛けると音が柔らかくなりますが何か物足りない感じがします。
これは個人の好みの問題だとは思いますが・・・。