RJX601のレストア


小生が就職したころ50MHzのAM機で移動運用によく出掛けました。その時に使ったのが井上電気の FDAM3で山頂から電波を出すと1Wでも結構飛んでくれました。その後、ナショナルから名機RJX601 が発売されFDAM3は古い機械となってしまいました。当時はAMからSSBに切り替わる時期だった のでさすがに3万円も出してRJX601を買う気にならず指をくわえて見ているしかありません でした。あれから40年近く経った今、ネットオークションでジャンク品が出ていたので若い頃の 夢を果たそうと思い切って落札しました。

正面 大きな傷や凹みはないですが擦り傷はたくさんあります。ロゴマークがNational なので後期型と思われます(因みに前期型はNATIONAL)。ダイヤル、スイッチ類、ボリューム類の 動きは問題なし。オリジナルのマイクが付属。ケースの蓋を固定するプラスチック製の爪に割れが ありガタが見られます。ジャンク品とのことで覚悟はしていましたが電源SWを廻しても電源が入り ません。まあ、ゆっくりやるべー。果たして使えるようになるのかな?・・と溜息が出ました。

マウスを画像に重ねると 画像が拡大 されます。(以下同様)

内部 RJX601の内部です。バリコンを回転させる金属棒が細いので最後期の製造品と 思われます。単2乾電池での移動運用はしないのでバッテリーボックス は取り外しています。基板が1枚物なのでレストアパーツの交換作業は比較的楽だと 思われます。RJX601が名機と言われる理由は、出力が3W出る(Lowで1W)、50〜54MHzに亘り送信 ・受信が出来て広帯域、スケルチなどの本格的FM機能、1VFO方式のため送受信時のキャリブレート 作業が不要、受信周波数を可変出来るRIT機能、メインダイヤルの減速比が大きく同調が取り易い、 丸型メーターの採用など若者向きの顔つき、などが挙げられます。欠点としては、ダイヤルに 少しバックラッシュがある、発振周波数が少し動くなどがあるが、FDAM3に比べれば出来栄えに 雲泥の差があります。


レストア作業の詳細

(1)電源が入らない
電源スイッチ兼音量ボリュームのスイッチがONにならない。何回かON-OFFを繰り返すと時々ONとなる。 接点のサビが原因とみてスイッチ部分の金属爪を広げて僅かな隙間から接点復活材を一吹きしたら回復。

(2)送信出力が0.2Wしか出ない
13.8Vの電源電圧で送信出力が0.2Wしか出ない。 同調コイルの調整で治ると楽観視していたがほとんど変化なし。ヤバいなー、冷や汗たらたら状態。 ファイナルの2SC1306のコレクタ電圧が4Vしかない。変調トランスのコイル抵抗を測定したら 異常なし。と言うことは2SC1306の故障か? 基板から取り外して検査したところ「当たりー」。 2SC1306がほぼ死亡状態。ガーン、代替えの石がない。新規購入は高過ぎて無理。そこで思い付いた。 以前CB無線機を改造して28MHzAMで使えるようにしたが、そのファイナルが2SC1306でした。28.305MHz のメインチャンネルをワッチしても誰も出ておらず、たまに出ていても話し方がCB口調の人が多く オジサンの出番は無さそうなので、ここは犠牲になってもらいます。

(3)ファイナルを交換しても送信出力が1Wしか出ない
2SC1306を交換して各種同調コイルを調整したが送信出力が1Wしか出ない。変調は掛かっており大声 を出すと僅かにプラス変調になっている。念のためにドライバの2SC696も28MHzAM機から取り外した 2SC1957に交換したが出力増加は僅かでした。経験者は知っていると思いますが、コイルのフェライト コアは何回も廻すと割れたりして最後は廻せなくなります。なので、同調回路のコンデンサを僅か ずつ増やして見ました。1〜5pFのセラミックコンデンサを交換しながら出力が増加するか試しました。 その結果ドライバとファイナル間の同調コイルに9pFを追加したら出力が2W程度に上昇しました。 更にファイナルのベースに繋がる抵抗15Ωに1000pFを並列接続したら3W程度に増加しました。 このアイデアはCB無線機の配線図から得たものですが出力が上がる理由は良く分かりません。

(4)変調が若干浅めである
AM変調が若干浅めに感じたので変調回路に手を入れました。マイクと初段トランジスタ2SC945間 の0.1μFに1.5μFを並列追加し、負帰還抵抗の15kΩを39kΩに交換しました。その結果、少しだけ 変調が深くなったような気がします。

(5)50.000MHzのキャリブレーションは不便である
ダイヤル目盛のキャリブレーションが50MHzなので良く使用する51MHzあたりでの運用に困ります。 水晶を29MHzから30MHzに交換すれば51MHzでキャリブレーションを取れますが、手持ちに10MHzの 水晶があったので利用しました。ただし、3逓倍のため出力が小さいので出力回路のコンデンサを 1pFに5pFを追加したり、発振周波数をぴったり30MHzに合わせるため2SC828のベースとアース間 に62pFを追加するなど余計な作業を要しました。欲を言えば、1MHz/100kHzのキャリブレーション が取れるようになれば素晴らしいのですが・・・。

(6)ケースの蓋を固定する爪が割れている
何本かの爪が割れていてケースの蓋がしっかり閉まらない。ネットオークションで4セットを 320円で購入して解決しました。こんな古い機械のパーツが今でも買えるのは有難い事です。

(7)FM変調の変調度がワイド仕様である
当時のFMチャンネルの間隔は40kHzであったためナロー化が必須です。FM変調度を調整する 抵抗(R80)を12kΩから62kΩに交換しました。ネット情報では68kΩがベターのようですが 手持ちがないので62kΩにしました。測定環境がないのでこれで様子を見ます。

無変調波形 全てのレストア作業が完了したのでRJX601のAM変調波形を観測しました。先ずは51MHz、出力 電力3Wの無変調波形(キャリア)です。電源電圧13.8Vでの出力電力は50MHz〜53MHzまでほぼ 一定で、53MHzから少しずつ下がり始めて54MHzでは2.5Wになります。

変調波形 1kHzで変調を掛けた時の波形です。理想的な100%変調は難しく波形もやや歪んでいます。 変調度はほぼ90%で、ピーク電圧が無変調時の1.8倍になっており、ピーク電力の計算値 は3Wx1.8x1.8=9.7Wという事になります。ピークホールド回路を付けた電力計で測定すると10W 近くまで針がピーンと振れるので良しとします。12Vバッテリーでは出力が2.2Wに下がりますが、 秋晴れの日に近くの丘から電波を出して見ようかと思います。

VXO改造回路 その後、受信周波数のみ微調整するRIT機能の改造を行いました。RJX601は送信受信 とも4MHzも幅がありダイアルの減速比が大きい割りに同調をピッタリ取るのが難しいのです。 そこで、送受信とも周波数を微調整出来るように改造しました。改造回路図から分かるように、 RIT OFFで受信時にRIT機能が動作し、RIT ONで送信時にRIT機能が働きます。受信時に動作する からRITと言いますが、送信時にも動作するのでFine Tuning機能とでも言えば良いのでしょう か。このFine Tuning改造で同調時の使い勝手がとても良くなりました。

改造配線1 改造はとても簡単です。配線の付け替えが1箇所と新規の配線が1箇所です。 まず、下蓋を外してRIT ON-OFFスイッチ付きのボリュームを見つけます。 スイッチに接続されている送受切替リレーからの赤い電線を反対側のスイッチ端子に 付け替えます。なお、写真は全ての改造が済んだ状態のものです。

改造配線2 次に、上蓋を外して変な丸いダイオード(SD-1)のある部分を特定します。ここには 送受切替リレー(S3)の端子があります。写真の緑色の電線を半田付けした端子からRIT ON- OFFスイッチの元々赤い電線が繋がれていた端子に接続します。これで改造は終わりです。

SSB検波 その後しばらくして、移動運用時の暇つぶしにSSB信号が聴けるように改造しました。 AM受信機で簡単 にSSBを聴けるようにするにはアンテナに受信電波と同じ周波数の信号を加える方法と中間 周波数(RJX601では455kHz)の発振器(BFO)出力をAM検波回路に注入する方法があります。 しかし、いずれの方法も発振器の周波数や出力を微妙に調整する必要があり再現性に 問題があります。そこで、今回は本格的なリング構成によるSSB復調器を装備する事に しました。リング復調器の出力は非常に小さいので約20倍のトランジスタ1段のプリアンプ を追加しました。この改造で一応SSB信号を聴けるようになりましたが、バンド幅が4MHz と広くバックラッシュもありメインダイヤルだけで同調を取るのは少し難しいです。 ただし、受信用RITをオンにして微調チューニングを取ればかなり安定にSSB信号が受信 出来ます。なお、本改造の要点は以下の通りです。
(1)使用したパーツは手持ちを使用しただけで、これが最善策ではなく近い値での互換も 可能です。
(2)本体からの455kHzIF信号は出来るだけ既存のAM検波回路に影響を与えないようハイ インピーダンス接続とし、T9の2次側コイルから18pで取り出し455kHz同調回路 を介してリング復調器に供給しました。
(3)BFOの発振周波数はUSBなので453.5kHzとした。自励式なので発振周波数は少し変動 するが452〜454kHzの範囲であればSSB信号はそこそこ受信出来る。 BFO発振周波数が少しでも安定するようにエミッタフォロアによるバッファアンプを追加 しました。
(4)BFOの出力は4.7kΩのボリュームで可変出来るようにしました。ボリュームは中間点 辺りが最もS/Nが良いように思われます。
(5)BFOが動作すると受信入力が全く無いのにSメーターが大きく振れる問題が発生 したが、BFO発振段の+8V電源を100μHのコイルでデカップリングしたら解決しました。 どうやら電源ラインを通じて453.5kHz信号が本体の中間周波増幅部にリークしたもの と思われます。
(6)SSB復調器の電源は安定化された受信用+8Vから供給しました。
(7)AM/SSB受信の切替は本体側面にあるMETER(S/RF-BATT)切替スイッチを利用 しました。バッテリーの電圧を測定する必要はほとんど無く、このスイッチが 2回路2接点だったのも本方法を思い付いた理由です。

基板取付 SSB復調基板をバッテリーボックスがあった場所に取り付けました。METER切替スイッチ の場所が狭い所だったので配線替えは少し苦労しました。スイッチは変調トランスの 右上の配線束の下部にあります。