天体望遠鏡の再アップグレード


80mm屈折型望遠鏡と115mmニュートン反射型望遠鏡で月、木星、土星、火星を暇な時に観測して 来ましたが、いつもの悪い癖でもっと綺麗に見えないかと欲が出て来たのでプチアップ グレードを行いました。主要なアップグレードの内容は24.5mmアイピースの31.7mm化、 ミラーレス1眼レフカメラのNIKON 1からSONYのNEX-5Nへの交換、WEBカメラの再導入です。 ついでに大型三脚の足を切断し短くして安定性向上と車での移動利便性の向上を図りました。 また、同じ赤道儀で反射望遠鏡も使えるように架台取付け金具を改造しました。天体観測機器 のアップグレードもこれが最後になります。高級望遠鏡、自動追尾高級赤道儀、高級三脚に これ以上投資すると何十万円も掛かるでしょうから。

1.アイピースの31.7mm化と減速器の自作

アダプター 80mm屈折型望遠鏡と115mmニュートン反射型望遠鏡は両方ともアイピースが24.5mm(ツァイス サイズ)のため視野が狭く見え味ももう一つです。天体観測の初心者のうちはそれでも不満は 無かったのですが、慣れてくると31.7mm(アメリカンサイズ)にグレードアップしたくなります。 そこで、例によってネットで調べたら80mm屈折型望遠鏡のドローチューブにねじ込まれている36.4 mm→24.5mmアダプターを36.4mm→31.7mmに交換すれば良い事が分かりました。ネットオークション で送料込み2000円以下で売られていたので早速購入しました。一方、115mmニュートン反射型望遠 鏡は54mmの樹脂製パーツがドローチューブにねじ込まれており24.5mmスリーブが一体型になって おり改造は相当難しそうです。

マウスを画像に重ねると 画像が拡大 されます。(以下同様)

アイピース 次は31.7mmサイズアイピースの購入です。24.5mmサイズに比べると種類も値段も豊富でどれを 買えば良いのか迷います。望遠鏡、赤道儀、三脚のグレードを考えると何万円もする高級な 物は諦めて5000円以下の安物を買う事にしました。最終的にVixenのウルトラワイド66度15mmに しました。既製品を1個買ってそれを参考に既存の24.5mmアイピースの筒を31.7mmに交換する 事を貧乏人は考えました。写真は24.5mmと31.7mmのアイピースですがレンズの大きさ、筒の 太さ、重さが大きく違います。

EP自作用パイプ 既存の24.5mmアイピースのレンズ部分を31.7mmの筒に挿入・接着して31.7mmアイピースもどき を作る事にしましたが肝心の31.7mmパイプが見つかりません。31.8mmの鉄パイプがネットで 売られていますが、鉄だと工作が難しいのでアルミパイプを探しました。すると、アマチュア 無線のGPアンテナの残骸の中に32mmのアルミパイプを見つけました。これを何かの方法で0.3mm ほど削れば良いのです。結果的にパイプを電動ドリルのチャックにガムテープで固定して水を 掛けながら耐水サンドペーパーを使って削りました。360番ペーパーで10分ほど削って最後に 1000番ペーパーで仕上げをしました。写真は削った後に切断を開始したところです。

自作EP 31.7mmに削ったパイプを金切り鋸で切って4個の筒を製作しました。筒の内部を黒や茶色の スプレーを塗って内部の乱反射を防いでいます。レンズ部分と筒は4箇所を接着剤で固定しました が力が掛からない場所なので全く問題ありません。アイピースが鏡筒内にずり落ちないように プラスチックのリングを接着しました。これで31.7mmアイピースが5個揃った事になります。 写真の左側からアメリカンサイズもどきのOr6mm、Or9mm、K20mm、K28mmです。

反射接眼部 反射型望遠鏡のドローチューブにねじ込まれている樹脂部分と一体になっている24.5mmスリーブ は切り取るしか改造方法がないし、接眼部の全てがプラスチック製のためガタが酷くピント合わせ に苦労するので接眼部全体を交換する事にしました。タカハシ製とか一流品は何万円もするため スコープタウンから送料込み5000円の接眼部を購入しました。鏡筒は直径140mmなのでピッタリ でしたが、ネジ穴の位置が10mmくらいズレていたため電動ドリルで3個の穴を開けました。 廉価品ですがチューブもスリーブも金属製なのでガタは無く動きも大変スムーズです。 最初から分かっていた事ですが、この反射望遠鏡は直焦点撮影も市販品のアダプターを 使った拡大撮影も無限遠にピントが合わず眼視かコリメート撮影しか出来ません。筒外焦点距離 が短いのが原因なので主鏡を前方に動かす方法やTリングとミラーレス1眼レフカメラセンサー 間の距離を縮める方法を別途検討する事にしました。

反射筒カット 新規購入した接眼部のドローチューブが結構長くて無限遠にピントを合わせた時に30mmほど鏡筒 内に突き出て干渉による悪影響が心配です。ドローチューブ切断と言う方法もありますが、つい でに直焦点撮影と市販品のアダプターを使った拡大撮影が出来る様にするため鏡筒を切断する事 を決断しました。光軸調整の器具も自作したし安物の望遠鏡なので怖い物はありません。写真は 金切鋸で25mmほど切断した後で鑢をかけサンドペーパーで整形したところです。主鏡部を固定 する3本のネジは0.5mmほど小さい穴を開けた後にネジをグイグイと捻じ込んだらうまく固定 出来ました。主鏡部は少々ズレても光軸調整をすれば問題ありません。

Tリング 鏡筒を25mmほど切断して光軸調整を完了したところ、市販品のアダプターを使った拡大撮影の ピントが合う様になり、ドローチューブの突き出しも改善され切断は大正解でしたが、直焦点 撮影はまだ合焦に至りませんでした。直焦点撮影時のT2-NEXリングのバックフォーカスが55mm と長いのが原因です。そこで、カメラのボディキャップに穴を開けて31.7mmスリーブを接着し バックフォーカスを30mmほど短縮しました(写真左側)。この対策でようやく反射型望遠鏡の 直焦点撮影も可能になりました。焦点距離がたかが900mmの望遠鏡での直焦点撮影は画像が小さ 過ぎて惑星向きではありませんが月の撮影では有効だと思います。

天頂ミラー アイピースの次は天頂ミラーの購入です。反射型望遠鏡はアイピースの高さが丁度目の高さ になるので問題はないのですが、鏡筒の長い屈折型望遠鏡では観測し易いように天頂ミラーが あった方が便利です。天頂ミラーも千差万別ですが3000円代の安物にしました。例によって 安物買いの銭失いです。写真左側は従来の24.5mm用で右側が新しい31.7mm用です。

減速器 アイピースの31.7mm化に伴ない80mm口径の屈折望遠鏡のピント合わせが少しでも楽になる 様に減速器を自作しました。 世の中にはマイクロフォーカサーなる便利な物がありますが数万円のお金が要るので貧乏人 はとても手が出せません。そこで、古いアマチュア無線機で使っていた同調バリコン用の 減速器と自在カップラーがあったので利活用しました。減速比は1:6位らしいです。厚さ 2mmのアルミ板を加工して黒色のスプレー塗装をしました。ドローチューブ繰り出しノブの パイプ径が6mmでなく8mm(メス穴はM4サイズ)だったので減速器に接続する時に少しだけ 工夫が必要でした。直径6mmのアルミパイプに頭部を切断したM4(4mm)ネジを挿入して メタルロックで接着固定しました。その後M4ネジをノブのパイプに締め込みますが、その ままだと左回し時にネジが緩むのでM4ナットでノブのパイプに強く締め付けました。 自在カップラーは6mmパイプのズレがあっても滑らかな回転を得るために必須です。また、 将来の売却時に簡単に元に戻せる様に鏡筒や接眼部に穴を開けてネジ止めしたり接着剤 を用いたりしない様に工夫しました。つまり、アルミ板は接眼部を鏡筒に固定するネジに Z金具と30mmの真鍮製6角棒を介して取り付けました。2ヶ所だけの固定なので安定性 を心配しましたが問題なく動作しています。本減速器のお陰で高倍率時のピント合わせが 大変楽になりました。

2.ミラーレス1眼レフカメラの購入

NEX5N アイピースの31.7mm化に伴いミラーレス1眼レフカメラを購入しました。実を言うとNIKON 1 は社外レンズを使った時に内部露出計が作動しないという大きな欠点がありました。そのため 適正露出を得るために一度絞り優先モードにして最適なシャッタースピードを覚える必要が あり、その後マニュアルモードにしてそのシャッタースピードを設定します。社外レンズでの 絞り優先モードではシャッターが切れないからです。実際、暗い撮影現場でそんな 事やってられないのでSONYのNEX-5Nボディーをヤフオクでゲットしました。値段も1万円 ちょっとと安く、内部露出計が常時動作し、ISO感度が最大25800もあり、撮像素子がAPS-C なのでNIKON 1より遥かに大きく(面積で3.2倍)、液晶モニターの角度調整が可能、 赤外線リモコンでシャッターが押せる等々、正に天体写真撮影に適しています。

拡大撮影ADP 月、木星の衛星、土星の輪を見るだけだったら1眼レフの直焦点撮影でOKですが、やはり 衛星の細かい部分まで見るには拡大撮影法に挑戦する必要があります。コリメート法だと 3個のレンズを介しますが拡大撮影法だと2個で済むため鮮明な画像と大きな拡大率が期待 出来ます。そのためには拡大撮影用アダプターが必須です。高級な物では2万円もします が貧乏人はOrionのバルク品を5000円以下で購入しました。左側はカメラとアダプターを 接続するT2-NEXリング、右側の3個が拡大撮影用アダプターです。内部に31.7mmサイズのアイ ピースを収納して右側のパイプを望遠鏡に接続します。拡大率はアイピースの焦点距離と アイピースからカメラセンサーまでの距離で変わります。本アダプターは距離を34mmほど 可変出来るので拡大率を変えられます。

コリメーター構造 アイピースの31.7mm化が完了したついでに赤外線コリメーターを自作しました。買えば済む話 ですが格安で買った望遠鏡に1万円も出すのは勿体無いからです。赤外線発光素子は秋月で 500で売っており、他のパーツは全てホームセンターで揃えました。主なパーツは塩ビソケット とパイプ、ステンレスネジとナットで接着剤は何にでも使えるメタルロック、塩ビパイプの 隙間を埋める材料として塗装で使うマスキングテープ等です。なお、赤外線コリメーターでの 光軸調整をする前に斜鏡の位置を決めるコリメーションアイピースも自作しました。中央に1mm の穴を開けた十字線のあるレンズのないアイピースです。

コリメーター校正 写真は製作したコリメーター自身の光軸を合わせる治具で、コリメーターを回転させても壁に 映る照射点が出来るだけ動かないように6本のネジを調整しました。実際は5m離れた場所に 化粧鏡を置い てビームを反射させ手元の紙に照射された赤い点が動かない様にネジを締めて固定しました。 光軸調整を行う前にコリメーションアイピースを使って斜鏡と主鏡のセンターが合致するよう 斜鏡の位置を調整しました。さて、光軸調整の第1段階は鏡筒を覗いてビームが主鏡のセンター に来るように斜鏡の3本のネジを調整します。第2段階は主鏡で反射してコリメーターに戻って 来たビームが照射センサーの中央に来るように主鏡の3本のネジを調整します。実際は接眼部の ピントノブの操作やコリメーター自身の光軸の誤差で戻って来るビームが1cmほど動くと言う 問題が発生しました。仕方がないので反射ビームが照射センサー内にあればOKとして「ほぼ」 光軸調整完了としました。安物の反射型望遠鏡なので光軸調整に余り神経質になっても意味が ありません。自作赤外線コリメーターもどきも十分実用になる事が分かりました。何はとも あれ光軸調整で反射型望遠鏡の見え味が少しでも改善される事を期待します。
なお、赤外線コリメーターは屈折型望遠鏡の光軸調整にも使えます。接眼部にコリメーターを 取付けて対物レンズに映る赤い点がセンターに来ればOKですが、小生の1200mm望遠鏡ではセンター を中心に半径1cmくらいの円を描きました。接眼部を鏡筒に固定する3本のネジを調整して赤い点を センターに誘導したら対物レンズからの反射ビームがコリメーターのセンターに戻って来たので 光軸は合っていると判断しました。しかし、この状態でコリメーターを回転させると対物レンズの 片側半面で円を描くため最終的には元に戻したのでセンターで円を描いています。

赤外線シャッター NEX-5Nのシャッターは嬉しいことに赤外線のリモートで切れるのです。しかもリモコンが 送料込みで1000円で買えるんです。もちろん2秒のタイマーもOKです。カメラの周囲1m以内 だとどこからでもシャッターが切れます。天体写真の撮影では必須なので大助かりです。

社外レンズADP 折角NEX-5Nを買ったのに天体写真だけ撮影するのでは勿体無いので、手持ちのNIKONフィルム カメラ用オールドレンズが使えるようにアダプター(Nikon-NEX)を購入しました。マニュアル モードで撮影すればオールドレンズでも内部露出計が使えるので全く問題ありません。 値段も2000円台と安いです。写真はNikkor 50mm F1.4レンズを装着したもので35mmフィルム カメラサイズに換算した焦点距離は75mmとなります。

3.WEBカメラの再導入

Qcam 以前、WEBカメラを改造して60mm屈折望遠鏡で直焦点撮影した経験がありますが、当時は動画を 撮影してRegistax6で画像処理する方法なんて知らなかったので全て静止画でした。画像の映りが 今一なのとカメラがWindows XPでしか動作しないためゴミ箱の屑と化しました。ところが、 Registax6の使い方が少しずつ分かってきたらもう一度挑戦して見たくなりました。購入した のはLogicoolのQcam C310と言うWEBカメラで送料込みで2000円もしない安物です。Windows 7で 動くし最大1280x720ピクセルの動画を撮影出来ます。改造も赤外線フィルターがセンサー直前に 付いておりレンズは左に廻せば簡単に取り外せます。31.7mmのスリーブとして排水ホース用TS継 ぎ手(直径31mm長さ60mm)を25mm長に切断して接着しました。隙間を少しでも詰めるため銅箔 テープを3重巻きしています。115mm反射望遠鏡で近所の電柱を使って動作確認しましたが天気が 悪くまだ天体観測に至っていません。

4.三脚の改良

新三脚 80mm屈折型望遠鏡の三脚は長過ぎて取り扱いが不便なため改良しました。3本の脚を各々45cmほど カットして接着剤で貼り付けましたが力はほとんど縦方向に働くので強度的には問題ないようです。 この改良で腰掛に座って星を楽に観測出来る様になりました。また、短くなったので強度的にも 安定し、組み立てたまま車で運搬出来ます。写真は赤道儀を天の北極に合わせた後に鏡筒を 南東方向に高度を50度に設定した状態です。参考までに45cm分切断した脚を写真で示します。

極軸合わせ 本改良に伴って架台を本来の赤道儀として使う事にしました。経緯台は素人目には簡単ですが 星を追尾するには2つのハンドルを動かす必要があります。赤道儀では一度星を導入した後は 赤経ハンドルだけで追尾出来るので慣れれば非常に便利です。赤道儀を使いこなすには極軸を 天の北極に合わせる作業が必須です。自宅での観測では家が邪魔になり北極星が見えないので コンパスを使って極軸を合わせます。極軸を磁北から7度ほど右方向にずらし、目盛環を使って 緯度を35度に設定します。自動追尾ではもっと正確に極軸を合わせる必要がありますが手動 追尾ではこれで十分です。極軸の設定後に赤経・赤緯クランプを緩めて手動で望遠鏡を南方向 に動かします。これで赤経ハンドルのみで追尾出来るようになり、星は視界の中央付近を 一直線状に移動します。

5.再アップグレードの成果測定(中間報告)

木星直焦 3万円近く投資して再アップグレードしましたが、成果測定の結果次第では我が家の大蔵大臣 から責任を問われるので早速木星を撮影しました。写真は80mm反射型望遠鏡で直焦点撮影した 木星と衛星で画像はトリミングした以外何の加工もしていません。直焦点撮影では31.7mm化の 効果はなく変わったのはカメラの交換だけです。 NEX-5Nは社外レンズのマニュアル撮影でもピント合わせが楽なので衛星までかなりシャープに 写っていますが、対物レンズがアクロマートなので木星外周の青い滲みは仕方ありません。 NEX-5Nは内部露出計が作動するし赤外線リモコンでシャッターが切れるので撮影が大変楽に なりました。月や土星も撮影したいのですがあいにく時間が合わないのでいずれ行いたいと 思います。

木星拡撮1 写真は80mm屈折型望遠鏡で拡大撮影した木星です。今回購入した拡大撮影アダプターに15mm アイピースを装着して拡大率最大に設定してNEX-5Nで撮影した静止画像です。トリミングした 以外は何の画像処理もしていないので鮮明ではありませんが2本の縞が何とか見えています。 眼視でははっきり確認出来ますが写真ではぼんやり写るだけです。でも、シーイングが良く ない状況でしたが今まで撮影した木星の写真で最高の出来なので再アップグレードの成果だと 思います。

木星拡撮2 写真は接眼部を交換し光軸調整した115mm反射型望遠鏡で拡大撮影した木星です。市販の拡大 撮影アダプターに15mmアイピースを装着してNEX-5Nで動画撮影した画像を無料ソフトRegistax6 でスタックした後にウェーブレット処理したものです。640x480ピクセルのMP4動画をクロップ して木星をクローズアップしてからWMVファイルに変換、最後にAVIファイルに変換した後に Registax6で画像処理しましたが、正直言って画像変換ソフトやRegistax6 の使い方がまだ十分理解出来ていません。なので、過剰処理による怪しい画像になってしまい ました。見よう見真似で何とか撮影映像よりマシな画像を作れましたが、低解像度の動画 ファイルからこの様な画像が得られるとは驚きです。もう静止画に戻る事はないでしょう。 今後、Registax6をもっと勉強して1200mm屈折望遠鏡の拡大動画撮影に挑戦します。

木星拡撮2 その後、月が見れたので115mm反射型望遠鏡で直焦点撮影しました。640x480ピクセルの動画を 撮影してRegistax6で画像処理しました。若干過剰処理気味ですがまあまあ綺麗です。



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