土星の環をデジカメで撮影 |
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されます。(以下同様)
対物レンズは傷もカビもなくとても綺麗です。スペックは直径60mm、焦点距離910mmです。
筒の内部は黒く塗られており遮光環もあり丁寧に作られているようです。
3種類の接眼レンズが付属していました。左からK型20mm、K型12.5mm、Sr型4mmで倍率は各々45倍、
72倍、227倍に相当します。この望遠鏡最大の欠点が接眼レンズの筒サイズが24.5mmでツァイス
サイズと言われる物です。現在では31.7mmのアメリカンサイズが普通で、24.5mmのものは入手
難です。接眼レンズはサイズが大きいほど明るく視界も広く見え味が良いようですが、1万円
以内で月や惑星を見ようという魂胆なので我慢するしかありません。
因みに4番目はビクセンのOr型9mm、5番目はビクセンのOr型5mmで、本望遠鏡を買う前にフィルム
カメラ用の200mmズーム型望遠レンズと組み合わせて22倍と40倍の単眼鏡を作る目的で買っていた
ものです。ビクセンの接眼レンズはさすがに本物らしく重くてがっちりしています。筒サイズが
24.5mmなので本望遠鏡に兼用出来ます。
付属のSr型4mm接眼レンズは暗くて使い物にならないオモチャなのでOr型レンズの出番がありそう
です。そもそも60mm対物レンズで200倍以上の倍率なんて無理があります。この辺りが「買っては
いけない望遠鏡」と言われる所以かも知れません。
望遠鏡に付属の天頂ミラーです。とても軽くて安物の様ですがそこそこ見えています。
腰掛けに座って上空の星を気楽に見れるし、左右が逆になりますが地上の景色を見る時は重宝
します。オリジナルはローレットボルトが1個だったので更に2個増設して接眼レンズをより安定
に固定出来るように改善しました。
望遠鏡に付属の木製架台です。一応は赤道儀になっていますが使用感が多くガタガタです。
おまけに3脚の中央部を連結する金具が無くなっていたので円盤状の木板で間に合わせました。
こんなので土星なんか見れるかどうか心配ですが、「安上がりに」という事なので何とか
使い回すしかありません。現状、小生は赤道儀の使い方がよくわかりません。何と言っても
赤緯と赤経について理解する必要がありますが難しいです。いっその事、経緯台の方が小生に
向いています。分解可能な個所をバラしてグリスアップしたら動きはかなり良くなりましたが
僅かなガタは少しだけ残りました。
望遠鏡に付属の6倍x30mmファインダーです。内部の十字線を触ったのか少し曲がっており、鏡筒
への取付けもヤワで一度正確に調整しても何かの拍子に容易に照準がズレてしまいます。そこで、
十字線の張替え修理と3点固定から6点固定に変更すると共にローレットボルトにナットを噛ませて
ファインダーが簡単に動かないように改善しました。また、望遠鏡のドローチューブ(ピントを
合わせる装置)に目盛がないので、接眼レンズを交換したりデジカメを装着した時はピントを
再度合わせる必要があります。地上の風景だとピント合わせは苦になりませんが夜間に月や星を
見ながらのピント合わせは大変な作業です。そこで、ホームセンターで長さ15cmのステンレス製
スケールを買って「簡易ピントスケール」を自作しました。
簡易ピントスケールの部品です。ホースを蛇口に取り付ける時の28〜41mmφ用締め金具、ステンレス
製15cmスケール、ステンレス製ストッパー、4mmφ六角ボルトとナットです。予めメタルロックで締
め金具に六角ボルトを、ストッパーには目盛線を接着しボルトは使いません。次いで締め金具を
ドローチューブへ固定し、スケールをスライドさせて位置を読み取るためのストッパー
を鏡筒にメタルロックで接着しました。これで予め接眼レンズ毎のピント位置を測定し表にして
おけば、眼視時やデジカメ撮影時のピント合わせが非常に楽になります。本改善に要したコストは
約1,500円でした。
天体望遠鏡は眼視出来れば一歩前進ですがやはり写真を撮りたいですよね。そこで、
デジカメで撮影する方法を検討しました。デジカメ一眼レフの直付けはカメラを持ってない
ので除外です。そうすると現在持っているコンパクトデジカメ「ニコン Coolpix P300」に
よる撮影になります。このカメラは1220万画素、光学ズーム4.2倍、電子ズーム2倍です。
レンズの焦点距離は4.3〜17.9mm(35mm版換算24〜100mm相当)、開放f値1.8〜4.9、ISO感度は
160〜3200です。シャッター速度(1/1600〜8秒)、絞り(1.8〜4.9)はマニュアル設定出来
ますが、ピントがオートフォーカス専用なのとシャッターレリーズがないのが欠点です。
より安定に綺麗な写真を撮るためには望遠鏡にデジカメを接続する「デジカメ
アダプター」なる小道具が必須です。当初、3,000円程度で安く売られている「ユニバー
サルデジカメアダプター」を購入しましたが、いざ使って見るとカメラの設定と調整が非常に
面倒臭いのとOr5mmなど長さの短い接眼レンズでは掴む場所がないため使用不可能でした。そこで、
もっと簡単かつ正確に光軸合わせが出来るように塩ビパイプを利用したデジカメアダプターを
自作しました。ただし、このデジカメしかアダプターが使えないのが欠点です。
また、実際にコリメート撮影した結果、望遠鏡の倍率を上げると全体の倍率が大きくなり
過ぎて撮影が非常に難しくなり画像も鮮明でなくなります。そう言う訳でデジカメ撮影時の
望遠鏡の倍率は45倍か72倍が限度です。
ホームセンターで自作アダプターに使える物がないかチェックしたところ、
水道用のパーツがデジカメ(Nikon Coolpix P300)のレンズ枠にぴったり納まる事を発見しました。
このカメラのレンズ枠は直径52mmで常時8mmほど前に突き出ているのでぴったり嵌ります。
値段は1個わずか160円ですが、後述するように長い焦点の接眼レンズでも使えるように2個購入
しました。
パーツの手ひねり用の突出部を金切り鋸で切り落としたあと直径35mmの穴を開けました。
その後、25mmパイプの受け金具を3個の2mmネジで取り付けました。カメラの電源が入ると
レンズがせり出して来ますが、Or5mm接眼レンズとの距離が5mmくらいになりベストマッチ
です。なお、K20mmやK12.5mmでは接眼レンズが長いため塩ビパイプの鏡筒部を2つ連結して
カメラレンズが接眼レンズに衝突しないようにしています。これで全ての接眼レンズ
を自作アダプターで使用出来ます。
望遠鏡に自作アダプター付きカメラを取り付けました。天頂ミラーを使っているのでカメラが
重みで抜けて落下する心配はありません。
これを使って撮影する方法は「コリメート法」と言われ、人間の眼をカメラレンズに置き換えた
ようなものです。コリメート法のメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット
・今見ている物を写真に撮ることが出来る
・レンズの取り外しが出来ないコンパクトデジカメや携帯電話等でも撮影可能
・倍率の微調整が容易(接眼レンズを取り替えるのみ)
・眼視からのパーツの変更が少ない(アダプターの追加のみ)
・望遠鏡の倍率の数倍の倍率でかつ明るい画像が得られる
デメリット
・多数のレンズを経由することによる像の劣化がある
・ピント合わせが2重で必要(望遠鏡とカメラ側)
・光軸の調整や、ケラレへの対処が必要
比較的画像が明るい月を利用してファインダーの微調整とデジカメアダプターの
テストを行いました。接眼レンズの焦点距離が12.5mmなので望遠鏡の倍率は72倍です。
ワイド端では大きなケラレが発生し液晶モニターに丸い穴が現れるだけで、これでは使えません。
ズームをテレ端側にするとケラレはほぼ無くなり像も大きくなりました。これなら十分使え
そうです。ズームを続けると電子ズームが動作し始め画像は更に大きくなりますが画質の劣化
が始まるのでこの辺は実際の撮影場面で考えます。この状態で撮影すると
望遠鏡の倍率の数倍になりこれがコリメート法の最大のメリットです。デジカメをマニュアルに
設定しISO感度と絞りを最大にして適切なシャッタースピードで撮影します。シャッターボタンは
手で押すと手振れが発生するのでタイマーを使います。小生のデジカメにはマニュアルフォーカス
機能がないため、ピントは望遠鏡の接眼レンズを前後させて液晶モニターの画像が鮮明になる
ようにします。
何とか望遠鏡で天体観測する環境が整いましたが、問題は月以外の惑星や星座がどこにあるのか
さっぱり分かりません。無料ソフトを検索したところ、Stella Theater Liteという便利な
星座ソフトを見つけました。任意の観測地、日付、時刻における全天の星の位置が表示出来
ます。これを使えば何時ごろ観測をすれば目的の星が見れるか一目で分かります。
でもその前に星座の名前と形について勉強する必要があります。北斗七星と北極星の位置
関係だけは覚えていますが。
やっと月の観測に慣れて来ました。液晶画面で見るだけなら割と簡単ですが、デジカメの
マニュアル設定に慣れるまで時間が掛かりました。
望遠鏡倍率は72倍で撮影しましたが総合倍率はその数倍になっているはずです。
デジカメのISO感度、シャッター時間、絞り設定等々を何回も変更して最適な写りにする
必要があります。月の場合は明るいのでISO感度200、絞り4.9、シャッタースピード1/50秒で
撮影しました。さすがにこの倍率では月面は1枚に入り切らなかったので、2枚撮影してパノラマ
合成ソフトで1枚に合成しています。
月を撮影していてすぐ近くに明るい大きな星が見えたので星座ソフトで調べた結果、木星だと
分かったので早速撮影に挑戦しました。ISO感度1600、絞り4.9、シャッタースピード1/15秒が
ベストでした。テレ端4.2倍+電子ズーム2倍で撮影したところ、目を凝らして見ると3個の衛星
が写っています。残念ながら木星の縞模様は「有るような無いような」程度にしか写っていま
せんでした。衛星を映そうとすると本体が露出オーバーになり、本体をベストに映そうとすると
衛星が映らなくなります。木星の撮影はどちらを注目するかで映し方が変わります。
さてさて、最終目標の土星の環の撮影です。星座ソフトで調べた結果、4月末に土星が真南に
見えるのは午前1時30分頃と分かりました。午前1時に南の空を
見上げましたが、住宅地のためか見えているのは3〜4個だけで明るさもそれほどではありま
せんでした。その中で1番明るい星に望遠鏡を向けてデジカメの電子ズームを一杯にしたところ、
見えました、おぼろげながら土星の環です。感激です。生まれて初めて自分で見た土星です。
しかも総額1万円もしない投資コストで。田舎町と言っても東京都内の住宅地の庭先から月、
木星、土星の撮影が出来た事に驚いています。空が青く輝く冬場などにはもっと綺麗な土星が
見れると思われるので、とりあえず天体観測に投資するのはここまでです。重い天体病に罹ると
すぐに何十万円も必要になるでしょう。この様なチープな機材で、いつか、信州の高原で満天の
空を眺めながら惑星や星団の写真を撮りたいと思っています。