カメラ用レンズで天体望遠鏡の製作


昭和生まれの大抵のおじさんは1眼レフカメラで写真を撮った経験があり、 デジカメ時代になって不要になった望遠レンズをどこかに仕舞い込んでいると思います。 小生もその1人でSIGMA製100-300mmズームレンズとTOKINA製400mm単焦点レンズを持って います。どちらもカメラ取付部はNIKON Fマウントです。カメラ用望遠レンズは口径は 小さいですが光学的な性能は優れているので焦点距離の短いアイピースを使えば立派な 天体望遠鏡になる筈です。一般的な天体望遠鏡の長さは1000mm近くあり重たいので取扱いが 大変です。そこで、長さ400mm程度の短い望遠鏡をちょこっと車に積み込んで高原に出かけて 星空を眺めて見たいと思い「カメラ用レンズで天体望遠鏡の製作」に挑戦しました。

SIGMAレンズ 小生の1眼レフカメラ歴はアサヒペンタックスSPから始まり、最後はニコンNew FM2で終わり ました。このため、最後まで残ったレンズはニコンのFマウントが多いです。写真はSIGMA製 の100-300mm f4.5-6.7 ズーム式望遠レンズで300mmにズームしたところです。軽くて使い 易いレンズですが対物レンズの口径が55mmと小さく、3脚への取付金具(3脚座)がないのが 欠点です。このため、手持ち使用になり低倍率での天体観測しか出来ません。

マウスを画像に重ねると 画像が拡大 されます。(以下同様)

TOKINAレンズ 写真はTOKINA製 MF RMC 400mm f5.6 単焦点レンズです。単焦点レンズはズームレンズより 明るくて光学的性能も良いのではと思って買っておいた物です。今となっては対物レンズ径 も72mmと大きく3脚座もあるので天体望遠鏡に改造するのに適したレンズだと思います。この レンズの特長はインターナルフォーカスシステムを採用しているのでピント調整で筒長が 変わらず、8cm長のレンズフードが内蔵されておりスーッと伸ばすだけなので便利です。 写真はレンズフードを一杯に伸ばした時のものです。オートフォーカスレンズのピント調整 はカラカラと軽く回りますが、このレンズはマニュアルなので粘りのある回転なのでピント を合わせ易いです。価格も低く抑えられておりコストパフォーマンスの高いレンズです。

マウントアダプター カメラ用望遠レンズを天体望遠鏡として使うにはFマウントに31.7mm径のアイピースを取り付 けるためのマウントアダプターが必要です。以前、36.4mm-31.7mmの変換アダプターがあった ので金切鋸で前部を切断後にレンズの後ろ蓋に穴を開けてメタルロックで接着した物を使った 事があります。見栄えがもう一つだったのと対物レンズの伸縮でピント調整をするのが微妙 なためアイピースを微動してピント合わせが出来るメーカー製の物を購入しました。Fマウ ントのフランジバック(カメラのレンズ取付面からフィルム面までの距離)が46.5mmなので、 このアダプターではその距離を41mm〜51mmに調整出来ます。フランジバックを仕様値に合わ せればレンズの距離計と実際の距離がほぼピッタリ合致します。数千円のコストが掛かりま したがピント調整が楽になりました。左側が手作りのアダプターですが光路長が短いため 距離目盛と実際の距離が異なったり焦点距離が短いレンズでは合焦しない場合が あります。

2倍テレコン 望遠レンズの焦点距離が300mmと400mmなので手持ちのアイピースで得られる倍率は20mmで 15〜20倍、15mmで20〜26倍、9mmで33〜44倍、6mmで50〜66倍になります。月を観測するだけ ならこれで十分ですが木星や土星などの惑星を見るにはもう少し高い倍率が必要です。 そこで、以前買っておいたNIKON製2倍テレコンバーター(TC-200)を使います。画質は若干 落ちますが簡単に望遠鏡の倍率を2倍に上げられます。

2.5倍バロー 対物レンズの焦点距離を延長するもう一つの方法にバーローレンズをアイピースの前に 挿入する方法があります。以前買っておいたAstro Street製2.5倍バーローレンズが使えます。 2倍テレコンバーターと比べると明るさが落ちますが画質の劣化はほとんどありません。 試しに2倍テレコンバーター+2.5倍バーローレンズで惑星を見ましたが、焦点距離が2000mm になるため画質がとても暗くなる上に星の追跡が非常に難しくなり実用的ではありません。

赤道儀 カメラ用望遠レンズを使った天体望遠鏡が一応完成したので微動雲台付きの3脚が欲しい 所ですが貧乏人は買うお金がありません。そこで、60mm径焦点距離910mmの屈折望遠鏡で 使用中の赤道儀に新しく作った天体望遠鏡を取り付ける台座を作りました。これで 高倍率での星の追跡が出来ますが、問題はファインダーをどこに取り付けるかです。 長さ400mm程度の短い望遠鏡でも高倍率ではファインダーがないと惑星を見つけるのは難しい です。そこで、出来るだけ望遠鏡にネジ穴を開けたりリングを取り付けたりしない方法を 検討した結果、写真の様に望遠鏡の右横に取り付けました。この台座追加でカメラレンズ による天体望遠鏡が使えるとともに60mm径910mmの屈折望遠鏡も同時に使えます。 いわゆる「2刀流赤道儀」の完成です。

新台座 新しい望遠鏡を赤道儀に取り付けるための台座のクローズアップ写真です。ホームセンター で購入したL金具とアルミ板で作りました。望遠鏡を一度取り外して再び取り付けた時に 同じ方向を向く様に3脚座を4枚の金属板で挟む込む仕掛けを作りました。これで望遠鏡と ファインダーの平行度を調整する手間がかなり改善されました。

スコープアイピース カメラ用望遠レンズで天体望遠鏡を製作して一定の成果を得ましたが、倍率が余り高くない ので地上の景色を見れないか検討した結果、正立像が見られる接眼アダプターがある事が判明 しました。KENKO製スコープアイピース NA という物でニコンのFマウント用をネットオーク ションで3,000円程度で買いました。内部に小さなプリズムが2個入っており確かに正立像が 見れますが接眼レンズがとても小さいために画質が暗く余り鮮明ではありません。接眼レンズ の焦点距離が10mmなので望遠レンズの焦点距離を10で割った値が倍率になります。 見掛けの視野がとても狭いので残念ながら低倍率でしか使えません。なお、天体望遠鏡を 使って地上の景色を正立像で見る方法に天頂ミラーがありますが、光路長が70mmくらい長く なるため合焦しませんでした。レンズの鏡筒を短く切断する事も出来ないのでこの方法は 駄目ですね。



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