原付バイクのエンジンボアアップ


原付バイクは近場の買い物等にはとても便利ですが、時速30kmの速度 制限、2段階右折、時には原付バイク進入禁止の道路もあります(私はコレで罰金払いま した。70才近い老人を捕まえて罰金取るなんて、情けを知らない福生警察署の白バイ隊員よ、 恥を知りなさい!)。 そんな訳で原付の呪縛から逃れる方法を考えましたが、最も安上がりな方法は 現有のマニュアル式原付バイクのベンリー50Sの排気量を増やす事(ボアアップ)です。 コスト、難易度を検討した結果、最小限の改造で済む75ccのボアアップキットにより排気量を 50%増加させる事にしました。ずぶの素人の年寄りが油まみれになりながら ボアアップを完遂、最高速度は少しだけアップしましたが、何よりも力が強くなり長距離移動 でも50kmの巡航が可能になりました。巷ではエンジンの排気量を増やした場合、クラッチ、 キャブレター、マフラー、オイルポンプなども交換した方が良いと言われています。ですが、 これらは問題が起きたら考えることにして先ずはボアアップとフロントスプロケットの交換のみ 行いました。原付2種の黄色ナンバー(50〜89cc)への変更は小生の住む市では改造申立書を提出 するだけで割と簡単に出来ました。ボアアップに要した総予算は工具も含めて2万円未満で新規に 90ccのバイクを買うより遥かに安いと思います。何よりもベンリー50Sには愛着があるのでもう しばらく頑張ってもらいます。

ボアアップキット キタコの75ccLightボアアップキットと15Tのフロントスプロケットです。Lightの意味は 比較的軽微な排気量増加なので、キャブレター、マフラー、クラッチなどの変更なしでも 動くという事だと理解しています。ボアアップキットはシリンダー、ピストン(ピストン リング、ピストンピン、クリップを含む)各種ガスケット、各種パッキンから成ります。 ボアアップによってエンジンの力は増しますがそのままでは最高速度は上がらないので フロントスプロケットを14T(以前オリジナルの13Tから14Tに交換済み)から15Tに 交換しました。

マウスを画像に重ねると 画像が拡大 されます。(以下同様)


工具とマニュアル エンジン改造作業に必要な工具でまだ持っていない物を買いました。今までトルクレンチがなかった ので勘でネジを締める「手ルクレンチ」で済ませていましたが、改造でエンジンを壊してはいけ ないので5〜25Nmのトルクレンチを買いました。また、パーツが固着している恐れもあるので プラスチックハンマーを買いました。ついでに4サイクルバイク用のエンジンオイルも買いました。 更に、ボアアップキットを使ったエンジン改造には「虎之巻」が必須です。これはキタコが 販売している作業マニュアルです。このマニュアル以外にインターネットでも改造例がたくさん アップされていたので参考にしました。

改造前エンジン 改造前のヘッドとシリンダー部分です。袋ナットとシリンダー部分がサビサビですが大丈夫か なあ。ナットが固着していて無理に廻すとナットを舐めたりボルトがポキッと折れないか心配です。

ヘッド取外し 先ずはシリンダーヘッドを取り外します。前もってエンジンオイルは抜いておきます。 左サイドカバー、吸気パイプ、排気パイプ、点火プラグを取り外します。シリンダーヘッド 両側のカバーを外してカムチェーンとカムスプロケットを取り外します。最後にシリンダー ヘッドを固定している4個のナットとワッシャーを外してシリンダーヘッドを抜き取りました。 ナットとワッシャーの外面はサビサビですが空気に触れていないところはとても綺麗で、 強度的には問題なさそうですが安い物なのでNap'sでステンレス製を買う積りです。 ガスケットが固着しているのでプラスチックハンマーで軽く叩いてから外します。 この作業で重要なのは点火時期を狂わせてはいけない事です。カムチェーンとカムスプロ ケットを指定の位置に合わせてからタイロックで縛っておきます。

ヘッド 取り外したシリンダーヘッドです。内部は真っ黒けです。タペット周辺のカーボンを落と して清掃しました。ボアアップキットにはタペットカバーのオイルリングが付属しており、 虎之巻でもタペットのクリアランスを調整する事になっていますが面倒なのでタペットカバー は外しませんでした。 また、吸気マニホールドとヘッドを固定するボルトが異常に固く、小生の工具では頭を舐め そうだったのでキャブレター出口で取り外しました。

シリンダー取外し 次はシリンダーを取り外します。ガスケットが固着しているのでプラスチックハンマー で軽く叩いて外します。新旧のシリンダーを比較します。穴の直径が39mmから48mmに大きく なりますが高さは同じです。

ピストン取外し 次はピストンを取り外します。両側に付いているピストンピンクリップの取り外しに大変 苦労しました。ニッパーで挟んでクリップを指定の位置まで回転させ、エイヤッと引っ張り 出すのですがなかなか難しいです。75ccのピストンで練習していましたが、49ccのピストン はとても小さくラジオペンチで掴みづらいのです。クリップを曲げて壊してはいけない ので気を使いました。新旧のピストンを比較します。かなり大きくなりこれは期待出来そう です。

ピストン取付け 次は新しいピストンを取り付けます。ピストンには2本のピストンリング、1本の波状エキス パンダとそれらを挟む2本のサイドレールを予め装着しておきます。リングの欠きの方向を マニュアルで細かく指定してしますが、リングは自由に回転するので実際にエンジンが 動けば徐々に動かないかと不信感で一杯です。再度ここでピストンピンクリップの装着に 手間取りました。古いピストンの取り外し時は壊しても大きな問題にはなりませんが、 新しいクリップを曲げて壊しては大事になります。装着に失敗したらあらぬ方向に飛んで 行くのでこれも要注意です。

シリンダー取付け さて次はいよいよ新しいシリンダーの取付けです。固いピストンリングを手で押さえながら少し ずつピストンをシリンダーに入れて行きます。幸いキタコのシリンダーは下部にテーパーが付いて いるのでエンジンオイルをたっぷり塗って作業すれば比較的簡単に挿入出来ました。

ヘッド取付け 今度は新しいシリンダーの上部にヘッドを取り付けます。実はここで予期せぬ問題が発生 しました。カムスプロケットの中心の穴がガイドピンに届かないのです。要するにカムチェーン の長さが足りない状態になりました。新しいシリンダーの寸法が少し大きくてこのままだとカム チェーンを交換せねばならないのかと焦りました。そこでヘッドを締め付ける4個のナットを規定 トルクの110%くらいで強く締めたら解決しました。やはりガスケットが新品のため少し強く締め ないといけない様です。従って慣らし運転が終わったら増し締めが必要です。(後で良く調べて 見たら、クランクケース下部のカムチェーンテンショナーボルトを抜いておけば、カムチェーン の張りが緩くなってこの問題は発生しなかったと思われます。)

スプロケット 新旧のフロントスプロケットを比較します。左側はオリジナルの13Tで15Tになるとかなり大きく 成ります。計算上の速度はオリジナルの1.15倍になります(最終的に16Tのスプロケットに交換 済み、速度比は1.23倍)。

スプロケット取付 最終的に16Tのスプロケットに交換しました。クランクケースのスペース的には17Tでも入りそう ですが、チェーンの長さが16Tで目一杯なので交換が必要になります。リアスプロケットを現在の 42Tから40Tとか38Tとかに交換すれば17Tでも行けそうですが排気量75ccでそこまで頑張っても 仕方ありません。

ボアアップ終了 49ccから75ccへのボアアップが完了しました。シリンダーがシルバーから黒に変わった事と ヘッドを固定する袋ナットがステンレス製に変わりました。点火プラグも熱価が1つ 上のCR7HSAに交換しました。エンジンオイルを入れてキック1発で掛かりました。力強い排気 音です。アイドリングも安定しています。オイル漏れや異音は今のところありません。 後は市役所で黄色のナンバープレートに変更申請するだけです。
ボアアップに要した概略予算は以下の通り:
75ccボアアップキット:8,100円
15Tフロントスプロケット:1,200円
虎之巻:900円
トルクレンチ:4,000円
プラスチックハンマー:1,000円
エンジンオイル:900円
点火プラグ:500円
ステンレス製袋ナット:900円
総額:17,500円

黄色ナンバー ボアアップが完了してもこのままではバイクに乗れません。今の原付ナンバープレートを 返納して原付2種乙(90ccまで)の黄色ナンバープレートに取替える必要があります。 小生の住んでいる市では、現ナンバープレートと印鑑を持参して 廃車手続きをした後に、改造申立書を添えて標識交付申請するだけでOKでした。 改造申立書の申告内容は、改造をした理由、改造の方法、改造で何がどう変わったか、 改造者名だけであり、ボアアップキットの購入を証明する書類や取付説明書等の提出は 必要ありませんでした。 改造理由は項目から選ぶのですが小生は「エンジン不調のため」にしました。他には、 エンジン焼付きのため、速く走りたいから、2段階右折をしたくないから、2人乗りをしたい から等があり、思わず笑っちゃいました。改造方法は「改造キットの取付け」を選択しました。 変更箇所は排気量を49ccから75ccに、改造者名は勿論自分です。税金の滞納がないか確認 したのでしょうか、書類を提出してから20分くらい待たされましたが、目出度く黄色のナンバー プレートを取得しました。

自賠責と3角ステッカー ナンバープレートが黄色になってもまだバイクに乗れません。自賠責保険の変更と3角ステッカー の貼り付けが必要です。市役所から新しいナンバープレートを交付された時に、古いバイクの 廃車申告受付書が発行されるので、これを持って自賠責会社の営業窓口に出向いて新しい保険 証明書とステッカーを貰いました。 なお、3角ステッカーはバイクショップで500円以下で買えます。これを貼らなくても道路交通法上 の違反にはならないようですが、原付バイクと見間違って警官に止められるのが嫌な人は安い ので貼っておく方が良いでしょう。
さてさて、排気量が75ccになったバイクの乗り心地は以下の通りです。
・エンジン始動時のキックが重くなった。
・排気音が若干大きくなった。
・2速、3速での加速が鋭くなり余程の坂道でない限り失速しなくなった。
・最高速度が伸びて平地で75km(メーターが60kmで振り切れるため推定値)まで可能になった。
・50km巡航が可能になり後続・並走車に迷惑をかける心配が少なくなった。
・燃費の大きな低下は今のところ感じない。
・エンジンの過熱やクラッチの滑りは今のところ感じない。
・キットメーカーからボアアップ後はハイオクガソリンを使うよう推奨されているが、貧乏性の 小生はレギュラーを使っている。ノッキング等の問題は今のところ発生していない。



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