FTDX400を改造して本格的な7MHzのAMに出られる様にしましたが、あちこち調整する箇所
があり年齢を重ねると共にオンエアーするのが段々と億劫になって来ました。そこで、3.757
MHzと7.195MHzに周波数を固定してほとんど調整箇所なしに運用する事を考えました。ついでに、
RCA製6146Bが2本あるので送信機のファイナルを6146Bパラとしました。当初、807パラで試作
しましたが最大出力が40Wしか出なかったので6146Bパラに替えました。6146Bパラでは局免
上限値の50Wに増力出来ました。なお、変調機はFTDX400改造送信機に使ったKT88プッシュプル、
受信機はLA1600を使用した半導体式シングルスーパーです。真空管式送信機の製作は多分これが
最期になる(?)と思います。
製作の基本方針は以下の通りです。
・送信、受信とも周波数は3.757MHzと7.195MHzに固定する。
・周波数の切り替えは2バンドなのでリレーを使用する。バンド切替用ロータリースイッチは
高価で広いスペースを必要とし、中古品では接点の接触不良の心配があるため不採用とした。
・受信は中間周波数455kHzのRF1段増幅のシングルスーパーとし、WideとNarrowを切り替え可能とする。
・7.195MHzの受信は夕方・夜間の大陸からの大電力放送局の混変調を避けるため水晶式フロント
エンドフィルターを採用する。
・バンド切替後の送信機の調整箇所を出来るだけ少なくすると共に受信時は無調整とする。
・送信機終段の中和は2バンド化に伴い調整が複雑になるので自己発振が起きない限り実施しない。

2バンドAMトランシーバーの送受信系統図です。送信部と変調部は真空管を使いましたが
さすがに受信部は真空管による高1中2シングルスーパーを作る元気は有りませんでした。
真空管は手持ちを使う事にしてその他の部品を集めないといけません。安上がりに
するためネットオークションをしばらく覗いた後に主要部品をゲットしました。
オークションに出ていない物はサトー電気で買いました。その他の部品は
手持ちの新古品、中古品を総動員しました。
因みに新規に購入したパーツ代は約30,000円でした。
・ネットオークションで買った物:タンクコイル、
終段用バリコン2個、プレートRFチョークコイル、リレー、OSC/DRIVE用バリコン
3個、500V100μ電解コンデンサー3個、455kHzSSB用水晶フィルター
・町田のサトー電気で買った物:水晶発振子8個、アンテナコネクター、リニアアンプIC、
7MHz同調コイル2個、3.757MHz同調コイル4個、455kHz同調コイル1個、
リレー6個、トロイダルコア2個、US8Pプラグ+US8Pソケット、リミッタアンプIC、
その他小物パーツ

送信部の回路図です。TX88AやTX88Dの回路図を参考にしながら作りました。
バンド切替後の同調バリコンの調整が可能な限り簡易になる様にコンデンサ値やコイルの
タップを熟慮した結果、ドライバー管プレート同調バリコン、終段管プレート同調バリコン、
負荷調整バリコンともほとんど触らなくても良いくらいまで追い込めました。
これでバンド切替時の離調に伴う過大なプレート電流が流れる心配もなくなりました。
中和無しでも自己発振や寄生振動は全くありませんでした。
電源トランスはFTDX400から取り外した中古トランスで、高圧の残留リップルを少しでも
減らすために2.5H150mAのチョークコイル(FTDX400から取外し品)を挿入しました。なお、
6146BのSG電圧降下用の30kΩ抵抗に並列接続した5000pFのコンデンサですが、JR3XUHさんの
ホームページの「実験的考察レポート」で紹介された被変調管のプレートとSGとの電圧位相を
揃える目的で挿入しています。これにより正真正銘のPSG「同時」変調が実現されます。
オシロスコープのプローブに付いている位相補正コンデンサと同じ原理です。なお、
スプリアスを出来るだけ抑えるためにバンド毎にπ型2段LPFを挿入しました。

受信部の回路図です。LA1600というICを使ったオール半導体式のシングルスーパーです。
主要部はFTDX400の受信部改造に使った455kHzAM検波器から流用しました。追加した部分は
2段LC同調式フロントエンドBPF(3.757MHz)、4ポールフロントエンド水晶フィルター(7.195MHz)、
RF GAIN調整付プリアンプ、LM380Nパワーアンプ、455kHzSSB用水晶フィルターです。
3757kHzの水晶はサトー電気で売られていますが受信用の水晶(4212kHz又は3302kHz)
は売られていません。そこで、売られていた4210kHzの水晶に20pFのトリマーを接続した
ところ首尾良く4212kHzを発振しました。高周波増幅用のFETですが、同調コイル3個を
使う3.757MHzには自己発振を防止するため内部帰還容量が1桁小さい(2SK192A:0.65pF、
2SK241:0.035pF)2SK241を使用しました。それでもゲートに1kオームを入れないと
発振します。7.195MHzではゲート側に同調コイルがないので2SK192Aでも安泰です。
なお、7.195MHzの4ポールフロントエンド水晶フィルター
はJA6EUU 今村OMの製作例を参考に作りましたが、作りっ放しの無調整でも効果は素晴らしく
夜間の大陸放送局の影響を全く受けません。1:16のコイルは原典ではFB801-43でしたが穴が
小さく工作が大変だったのでFT50-43に変更して7tのクワッドファイラ巻きとしました。通過
損失や帯域幅の測定はしていませんがAM受信に丁度良い帯域幅になっているようで受信音も
普通で篭った音ではありません。シングルスーパーでは急峻なIFフィルターを使っても夜間
の大陸放送局の影響は避けられなかったので効果は驚きです。

本受信機のもう一つの目玉はHi-Fi SSB用455kHz水晶フィルターです。ICOM製のFL-96で
-6dBでの帯域幅は2.8kHzです。ヤフオクでポチりました。価格はセラミックフィルターの
10倍以上しましたが、スカート特性がセラミックフィルターに比べると格段に良いので気
に入っています。

変調部の回路図です。FTDX400を使ったプレートスクリーングリッド同時変調AM送信機から
流用したKT88プッシュプル変調器です。変調トランスはLUXの7AM41で定格が40WのためKT88
は軽く使っています。電源トランスはコストパフォーマンスの優れたTS520用の中古品です。
KT88のプレート及びスクリーングリッド電圧を少しでも高くするため半導体アンプ用の電源
トランス2個を追加しています。また、少しでも変調の音質を改善するためKT88にカソード
負帰還を掛けています。

正面の写真です。厚さ1mmのアルミ板を加工して前面パネルを作りました。終段6146BのIp
及びIg測定用メータが設置されています。その他、TX ONのPTTスイッチ、ヒーターONスイッチ、
バンド切替スイッチが装備されています。

横面の写真です。厚さ6mmの木材と厚さ1mmのアルミ板でシャーシを作りました。最も
安上がりに作る小生得意の方法です。

背面の写真です。変調器用のAC100Vアウトレットと受信機アンテナ入力のBNCコネクター
を取り付けました。

内部の写真です。相変わらずの蜘蛛の巣状態です。4個のリレーは専用コネクタ
が無いため立型ラグに取り付けて直接半田付けされています。2個のドライバー段プレート
同調コイルはトロイダルコアに巻いたので漏れ磁束がなく自己発振の心配はありません。
各コイルの巻数はバンド切替時に同調バリコンを回転させなくても済むように計算して
決めました。

受信機の写真です。送信機の中に収容出来ないか検討しましたが2バンド化のため無理でした。
そこで変調器の空いた場所に組み立てた4枚のプリント基板を設置しました。左から、
LM380N音声パワーアンプ部、ローカル発振部、LA1600メイン受信部及びIFフィルター部、
フロントエンドフィルター及び高周波増幅部です。SメーターはTS520の中古メーターを
使用しています。受信機の12V電源は送信部から貰っています。スピーカーは8オームの
外部スピーカーです。前面には左からバンド切替SW、RFゲイン調整VR、音量調整VR、IF
フィルター切替SWが設置されています。

変調機の外観です。もともと変調器の空きスペースに送信部を組み込む積りで作ったので
シャーシ上はがら空きのため受信機を設置出来ました。中央の大きなトランスはKT88のプレート
電圧を嵩上げするものでAC70V、5Aの巻き線を使います。左奥のトランスが変調トランスです。
小さいですねえ。大きさだけ見ると交換したいくらいです。

変調機のハラワタです。パーツの斜め配置や空中配線は恒例であり良い子は決して真似
しないように。

変調器の低周波増幅段は6DJ8が1本だけのため直接マイクを接続しただけではゲインが足りません。
そこで、LPF付きの半導体マイクアンプを製作しました。当初、アンプはトランジスタ1石でしたが、
大声を出すと過変調の心配があるためTA2011Sというリミッタ機能付きICを使ったマイクアンプに
変更しました。これで小さい声でも大きな声でも100%に近い変調が安定に掛かるようになりました。
TA2011Sの最大出力は約0.6Vrmsになりますがソフトリミッタ特性になるように100kΩのボリューム
を調整します。
右に廻すほど強烈にリミッタが掛かると共に音質も劣化し、左に廻し切るとリミッタオフになります。
音質は低下するかも知れませんが元々「Hi-Fi AM」を目指している訳ではなく了解度を上げる為の
物です。なお、LPFはエミッタフォロア式の簡易な物でカットオフ周波数は3kHzです。

LPFの周波数特性です。「サレンキー型」と言われる2次特性を持つLPFです。カットオフ
周波数(-3dB)は約3kHzでほぼ計算通りです。挿入ロスは3.5dB(電圧比0.67倍)なので
マイクアンプの性能にはほとんど影響ありません。近接するSSB局に大きな迷惑を掛けない
ように付加しましたが効果の程は良く分かりません。

この様なラックにトランシーバや測定器が収納されています。地震対策が急がれます。

出力電力50W時のキャリア波形です。この時のプレート電圧は600V、6146Bのカソード電流
は180mA(2本)、コントロールグリッド電流は7.5mA(2本)です。

写真は800Hzで変調を掛けた時の7MHz変調波形です。変調率はほぼ100%でピーク電圧値はキャリア
時の2倍であり、従ってピーク電力は4倍になっています。口笛を吹くとピークホールド型
パワーメータの針が50Wから200Wに勢いよく振れるので気持ち良いです。